2010年 10月 今月の法話



                  中秋の名月

*  松虫・鈴虫 
虫の声
「あれ松虫が鳴いている  ちんちろ ちんちろ ちんちろりん
あれ鈴虫も鳴き出した  りんりん りんりん りいんりん
秋の夜長を鳴き通す  ああおもしろい虫の声」

秋の夜長を鳴き通す虫の声の心地よい時期となりました。また、聞法の好季となりました。虫の声を聞きながら以下のお話を思い出し、淨教寺報恩講の声明(しょうみょう)を聞きにぜひお出かけ下さい。ご一緒におつとめいたしましょう。
報恩講お勤め内容
18日午後2時「大師(だいし)影(えい)供(ぐ)作法」(念仏正信偈)、午後7時「往生礼讃日没偈」(善導大師作)
19日午前9時半「正信偈行譜六首引」、午後2時「奉賛(ほうさん)大師(だいし)作法」、午後7時「往生礼讃初夜偈」
20日午前9時半「正信偈行譜六首引」、午後2時「阿弥陀経」

松虫・鈴虫とは、親鸞聖人ご在世の当時、師匠法然聖人のもとにおられた時の出来事に出てくるお名前です。
その出来事とは、同じく法然聖人のお弟子であった、住蓮房・安楽房の二人が京都、鹿ヶ谷に念仏道場を開き不断念仏、浄土礼讃を修道しておられました。善導大師の『往生礼讃』を唱える六時礼讃念仏会でのお二人の声と姿はすばらしく見事なもので多くの参拝者の心を魅了しました。参拝者の中には出家して仏門に入る人もあったそうです。
そんな中、後鳥羽上皇の寵愛を受け、美貌と教養を持ち合わせた松虫・鈴虫姉妹は御所での暮らしに疲れ、心の安らぎを求めて鹿ヶ谷の念仏道場にお参りされました。そこで、阿弥陀如来の慈悲の世界に、住蓮房・安楽房の往生礼讃の声明の響きに感動され出家を決意されました。再三の申し出に真剣な思いを知った住蓮房・安楽房は松虫・鈴虫を剃髪し出家させました。
そのことを知った後鳥羽上皇は、非常に怒りこの事態を口実に、念仏教団の弾圧を行いました。それによって住蓮房・安楽房は死罪となり、法然聖人は讃岐の国へ流罪。親鸞聖人は越後の国へ流罪となりました。



               本堂 輪灯の輝き


「往生礼讃、無常偈」

「往生礼讃、日没(にちもつ)の無常偈」


人間悤々(そうそう)として衆務(しゅうむ)を営み、
年命(ねんみょう)の日夜に去ることを覚えず。
灯(ともしび)の風中にありて滅すること
期しがたきがごとし。
忙々(もうもう)たる六道に定趣(じょうしゅ)なし。
いまだ解脱して苦海を出(い)づることを得ず。
いかんが安然(あんねん)として驚懼(ぎょうく)せざらん。
おのおの聞け。強健有力(ごうごんうりき)の時、
自策自励(じしゃくじれい)して常住を求めよ。

(意味)
人間はあわただしく日常生活のさまざまな勤めをあくせくと営み、あっという間に月日が過ぎ去ってしまうことをなんとも思っていない。
ローソクの火が風の中にあっていつ消えるともわからないように、次々と六道
の世界を輪廻(生まれては死にを繰り返す)して、落ち着くところが無い。
いまだに苦しみの世界を出て、悟りの世界に到ることが出来ない。どうして、日々をぼんやりと過ごし、驚き恐れずにいることが出来ようか?
おのおのよく聞け。健康でいられる時、自らつとめはげんで、一日も早く涅槃の悟りを求めよ。


「往生礼讃、初夜(しょや)の無常偈」

煩悩深くして底なく、生死(しょうじ)の海(うみ)無辺なり。
苦を度(ど)する船いまだ立たず。いかんが睡眠(すいめん)を楽(この)まん。
勇猛(ゆうみょう)に勤精進(ごんしょうじん)して、
心(しん)を摂してつねに禅に在(お)け。

(意味)
貪欲、怒り、嫉み、妬みの煩悩は、汲めども尽きせぬ底なしの状態である。生まれては死に、生まれては死にを繰り返し、落ち着く場もなく時は過ぎ去っていく。この苦しみの海を乗り越え渡そうとする船はいまだ出発していない。どうしてそのことに目覚めず惰眠を貪っていることが出来ようか。勇敢に心を奮い立たせて、勤めて努力して、心を集中して瞑想の時を持ち、悟りを開け。