今月の法話      平成30年 11月


成 道 会 (じょうどうえ) 

成道(じょうどう)の歌(うた)

作詞 仏教音楽協会  作曲 藤井 清水

1、金剛(こんごう)の み座(ざ)はゆるがず  菩提樹(ぼだいじゅ)に 朝風(あさかぜ)たちて
  明星(みょうじょう)の ひかりかがやき  華(はな)ぞいま ほほえみにおう

2、煩悩(ぼんのう)の けがれにしまぬ  ニルヴァナの 大(おお)ぞらすみて
  天上(てんじょう)の 調(しら)べほがらかに  鳥(とり)ぞいま よろこびうたう

3、大聖(だいしょう)の さとり円(まど)かに  みめぐみの 海原(うなばら)ひろく
  こぐふねの ゆくえはるかに  月(つき)ぞいま われをてらす

12月8日は「成道会(じょうどうえ)」といって、お釈迦さまがお悟りを開かれた日で、仏教徒にとって大切な日です。
「成道(じょうどう)の歌(うた)」の内容は、
1番は、インド・ブッダガヤーの菩提(ぼだい)樹下(じゅか)の金剛法座(こんごうほうざ)において、ゆるぎのない悟りを開かれたことを讃えられています。
2番は、煩悩の誘惑を断って、涅槃に入られたことを、
3番は、大聖(だいしょう)釈迦牟(しゃかむ)尼(に)世(せ)尊(そん)(お釈迦さま)のさとりが完全で円満なことを示し、そのめぐみがあまねく世界に至り届き、そして、お釈迦さまの悟られた真理の智慧は、現在を生きる私たちを照らす光となっていることを高らかに歌っています。

お釈迦さまは、釈迦族の王子として、父・シュッドーダナ王(浄(じょう)飯(ぼん)王(おう))、母マーヤ夫人のお子として誕生されました。ゴータマシッダールタと名づけられましたが、母マーヤ夫人は一週間で亡くなられます。以後、叔母のマハープラジャパティーに育てられたお釈迦さまは、多感な少年時代を過ごし、16歳でヤショーダラーと結婚し、一子ラーフラが誕生します。
仏典によりますと、お釈迦さまは「老・病・死」の現実の相を目の当たりに見て、世の無常を悟り、出家を決意されます。王子としての位を棄てての出家でした。
山に入って道を学ぶこと勤苦6年、さまざまな苦行をなされましたが、心身を痛めるだけであることに気づかれ、苦行をやめられました。
ブッダガヤーの近くナイランジャナー河(尼(に)蓮(れん)禅(ぜん)河(が))で、村娘スジャータの乳粥の供養を受けた後、沐浴し、菩提樹の下に端座し瞑想に入られました。さまざまな魔物を降伏し、縁起の法(一切のものは種々の原因によって起るという真理)を悟って、仏陀となられました。時あたかも、12月8日の暁、明の明星が輝く頃であったといわれています。

お釈迦さまは、老・病・死という人生の苦悩の解決を求めて出家なさいました。これは、言い換えると、生死の問題の解決を求めてということです。
人は、何のために生まれ、何のために生き、死んだらどうなるのか?この人生にどんな意義があるのか。この人生の根本問題をお釈迦さまは、縁起の法を発見され、解決なさいました。
しかし、私たちは自分の人生の根本問題である生死の問題に一向耳を傾けず、好きや嫌い、勝った負けた、損した得したと、目先のことばかり追い求め、愛と憎しみに明け暮れています。
そういう私たちの姿を悲しまれ、あなたの生死の問題を既に解決して下さり、「南無阿弥陀仏」と喚(よ)び通しに、喚(よ)んで下さる仏さま(阿弥陀さま)がおられますよと教えて下さったのが、お釈迦さまなのです。

私は何のために生まれてきて、人生を過ごし、どこへ行くのかまったくわからずにいます。その私に向かって、「あなたは阿弥陀如来という本当の親に出遇うために生まれ、人生を過ごし、本当の親の家であるお浄土に還っていくのですよ。」と、喚ばれることによって、私の人生の進路が明らかになり、死がむなしい終わりではなく、お浄土へ生まれていく機縁であると味わうことが出来るのです。

お釈迦さまが成道されたおかげで、今私は、生死の問題の答えである「南無阿弥陀仏のお念仏」に出遇えたのです。