今月の法話 2月


「二胡からの響」 姜 暁艶(ジャン ショウイェン)


  二   胡  ジャン ショウイェンさん (右)
  シンセサイザー 御堂 悠輝さん (左)


今年の新年初法座(1月20日日曜日)は、二胡の演奏とお話を中国出身の二胡奏者であり医学博士でもある姜 暁艶(ジャン ショウイェン)さんにお願いしました。
参詣された方々は、二胡の美しい音色の中に阿弥陀さまのあたたかな慈悲の風を感じ取っていかれました。
中島みゆきさんの「糸」を演奏されるときに、歌詞にふれて「縦の糸はあなた 横の糸は私」の表現の「縦の糸」は私にとっては「阿弥陀さま」です。と、語られたところに浄土真宗をご自身の大切な依り所にされておられると感心して聞かせていただきました。演奏はぜひCDまたはネットで検索して聴いてみて下さい。
ジャンさんの著書「幸せへの扉 慈しみの心」から一部ご紹介させていただきます。

仏教との出遇い

中国遼寧中医大学から広島大学医学部へ客員研究員として1997年(平成9)来日。言葉の壁、生活環境の違いに苦労される中でお寺にお参りする機会を得て、仏教の素晴らしさに出遇われます。その時のことを、「みなさんがお経を読んでいるあいだ、言葉はわからないし、仏像をじっと見ていると、心は不思議に穏やかになりました。仏さまの力をいただいたような感じがしました。」「本堂の中に入り、仏さまの前に座って手を合わせ、仏さまの顔を見上げました。すると、なぜか涙がポロポロとこぼれました。そして、不思議なことに仏さまと1対1で、おしゃべりをはじめたのです。もちろん中国語です。誰にも打ち明けることのできなかった私のつらい思いを、仏さまにじっくり聞いてもらいました。すると、つらい気持ちがすっと楽になったのです。思い返せば、このときの体験が日本での仏さま、仏教との出遇いのはじめでした。」
「そんなある日、泊まったホテルの引き出しから『仏教聖典』の本を見つけました。うれしくてうれしくて、一気に何ページも読みました。この本を読みたいとホテルの人にお願いし、『仏教聖典』をいただきました。そして、聖典を読み続けながら、次第に仏さまのお慈悲のこころが、私に伝わってきました。淋しさにくれる私は、この本を通して仏さまとお話ししているのだと思うようになりました。淋しいとき、私は一人ぼっちじゃなく、仏さまと一緒にいるのだと感じています。仏さまは、大地のように私を支えて下さっていると思います。」


 仏教聖典(仏教伝道協会)


   境内のロウバイ



仏教讃歌に感動

5歳の時から、二胡の稽古をしていたジャンさんは、広島音楽高等学校という浄土真宗の宗門学校で演奏された際に「仏教讃歌」と出会われたそうです。その時の感動を「生徒さん二人が花を持って、音楽に合わせゆっくりと歩きます。ステージの上にあるお仏壇まで歩みを進めるのです。そこにお花をお供えし、手を合わせ、またゆっくりと帰っていく。一瞬、心がとてもきれいになるのを感じました。心が洗われる、澄みわたるという感じでした。そして、流れていた音楽がまた深く印象に残りました。それが「仏教讃歌」でした。これが「仏教讃歌」とのはじめての出遇いです。その後、お寺で二胡のコンサートを頼まれるようになり、ますます深く仏教讃歌の世界に入っていくようになったのです。私の感性にあっているのでしょう。だんだん私の心は、仏教讃歌で満たされるようになりました。仏教讃歌は、本当に親しみやすく、わかりやすい法話でもあると思います。仏教讃歌はただ仏さまを讃えるだけではなく、仏さまに遇い、生かされていることへのよろこびと感謝をあらわすものだと思います。仏さまの智慧と慈悲が、美しい旋律によって表現されています。いのちの尊さに心の底まで深く感動いたしました。力強く生きるいのちのエネルギーと、勇気と安らぎを、私にもたらしてくれます。」

医学と音楽との融合

「今まで研究した医学と、学んできた音楽とを融合し、みなさんに何かお役にたちたい、お医者さんのような活動もしたいと考えたとき、音楽療法というものが頭に浮かびました。」「音楽療法はわかりやすく言えば、予防医学です。心のケア。仏教の教えによる生き方・考え方・見方と、医学の知識、そして音楽での癒し、この三つの力を合わすことができれば、きっと多くのみなさんが心身共に元気になっていただけると思います。そんなことから、ストレス社会への音楽療法と、心のケアの仕事をやろうと決心し、大学院を卒業後、広島二胡音楽院をスタートさせ、現在に至っています。」


あたたかい日中 越冬していた
  ムラサキシジミ(左) と
   ヒメアカタテハ(右)が日向ぼっこ