2020年(令和2年) 5月 法話


新型コロナウイルス 

全国に非常事態宣言が発令されました。不要不急の外出自 粛が強く望まれ、三密(密閉・密集・密接)を避けるように求 められ、本山を始め各寺院でも法要、法座等の行事の中止もしくは延期を告知されています。淨教寺におきましても4月8日の花まつり(法要のみ)を最後に、しばらく行事中止のご連 絡をさせていただきました。

毎月20日に開催する「淨教寺定例法座」の前身は明治時代に始まった「尼講(あまこう)」といわれています。約150年間、戦争中や自 然災害の中でも、毎月欠かさず継続されて来た法座がこの度の新型コロナウイルスの蔓延により、中止になりましたことは法座活動が始まって以来、初めてのことではないかと思います。残念な思いでいっぱいです。せめて、お勤めだけでもとの思いから4月20日は本堂におきまして、寺族、院代のみで正信偈六首引をお勤めし、住職の法話で定例法座を内勤めさせていただきました。ここにそのときのお話を紹介(掲載)いたします。

住職 法話「新型コロナウイルスをどう受け止めるか。」

感染経路もなかなか特定できない中で、発熱、PCR検査で陽性という方、また感染していても自 覚症状がないままに行動している人もいるという状況です。いつ自分が感染して重篤な状態になってもおかしくない環境の中で、不安な毎日を過 ごしておられることと拝察いたします。 

この度のこの「新型コロナウイルス」をどのように受け止めるべきか?
稲垣瑞剱先生の
「幸福 来たらば敵と思え、苦しみ来たらば惰眠(だみん)を覚(さ)ます他力(たりき)大行(だいぎょう)の催促なりとおもうべし」
とのおことばを大切に受け止めたいと思います。

人間のおごり、自 己中心的な自 然 破壊(森林破壊、海洋汚 染、世界的な温 暖化、二酸化炭素排出など)への阿弥陀如来(他力大行)からの警鐘(ご催促)であり、五濁(ごじょく)悪世(あくせ)が着実に進んでいる顕われであると思います。

では、今、私 たちは何をすべきか?

各自 のあり方を見つめ直し、謙虚に身を慎み、少欲知足を心がけて日々を過 ごすことが大切でしょう。
そして稲垣瑞剱先生の次のおうたを実行することです。

「仏を敬い 因果を信じ 親切尽せば 失敗はなし」

外出自 粛、行動自 粛の中、時間的余裕が出来た日々、じっくりと仏書を読むことをお勧めします。『佛法味(ぶっぽうみ)』ぜひお読みください。

親鸞聖人の著作『教行信証』総序のご文(現代語訳)に

ひそかに想うに、人の思いをはるかに超えて万人を包む広大な本願は、渡りがたい苦悩の海を渡したまう大いなる船 であり、すべての人をさわりなく救いたまう阿弥陀仏の光明は、私 たちの無智の闇をやぶって、心に真実の明るさをもたらす、太陽のように輝く智慧の徳そのものです。
それゆえ浄土の教えを説くべき機縁が熟するや、提婆達 多(だいばだった)は、阿闍世(あじゃせ)太子(たいし)をそそのかして父王(ふおう)殺害という逆悪をおこさせ、それによって浄土往生の行業(念仏)を授けるにふさわしい救済の対象 が現れたので、釈迦如来は韋提希(いだいけ)夫人(ぶにん)に、安養浄土を願生すべきところとして選定せしめられたのでした。
この 『観無量寿経』 の教説によって、大悲還相(だいひげんそう)の菩 薩たちは、仮に提婆や阿闍世や、韋提希となって我らの前に現れ、阿弥陀仏が苦しみ悩むすべてのものを平等に救おうとされていることを知らせ、仏陀の大悲は、五逆罪(ごぎゃくざい)や謗法(ほうぼう)のもの、さらには成仏の縁が絶えているといわれる一闡提(いっせんだい)を正しき救いの対象 として、それに真実の道 を恵み与えようと思し召していることがわかります。

と、あります。

この親鸞聖人のお言葉から、この度の「新型コロナウイルス」も謀反を起こした「提婆達 多や阿闍世太子」と受け止めることが出来るのではないでしょうか。父王を殺害した太子。提婆はその太子をそそのかした張本人という悪者ですが、そのものたちのお陰で、韋提希夫人が救いを求 め、釈尊の説法を聴聞することが出来たのです。
「新型コロナウイルス」により、いろんなことを見つめ直し、学ぶ機会を持つ事ができたのではないでしょうか。

現在、NHKラジオで「宗教の時間 『観無量寿経をひらく』」というお話を釈徹宗さんがされていますので拝聴され、テキストを読まれるのもいいかと思います。

あらためて、稲垣瑞剱先生の二首のおうたを、大切にかみしめたいものです。

「幸福 来たらば敵と思え、
      苦しみ来たらば惰眠を覚ます他力大行の催促なりとおもうべし」


「仏を敬い 因果を信じ 親切尽せば 失敗はなし」