2022年(令和4年) 3月 法話

欲 の心  

ご 恩

白梅、紅梅 の花が目にあざやかに輝いて、春の訪れを感じる季節となりました。
先日、親戚の前々住職様(お祖母さま)の三十三回忌の法要にお参りさせていただきました。その席でご住職(お孫さま)から思い出話しを聞かせていただきました。
ご住職(お孫さま)が幼少のころ、夏の昼、友達と遊んでいると、山門横の大木に、大きな蛾が止まっているのを見つけて、突いて遊ぼうとしている様子を見て、
前々住職様(お祖母さま)が、「何してる。その子も蛾に生まれたくて生まれてきたんと違うで。その子も生きたいんやで、ほっといたら夕方になったらどこぞへ飛んでいくわ。そっとしとき!」
と、声をかけて注意してくださったそうです。
同じく、境内に出てきた「アオダイショウ(蛇)」にちょっかいを出していた時にも、蛾の時と同じように諌(いさ)めてくださったそうです。
『仏説阿弥陀経』の中に「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光」とあります。
それぞれの色が、それぞれの色を輝かせ、一生懸命生きています。それぞれのいのちを尊びながら日々を過ごしたいものです。現実はなかなか、そのようになりませんがお聴聞を重ね常に自らを見つめ直しながら精進していきたいと思います。と、語っておられました。



    奉  納    「龍」


     奉  納  「虎」 雙雄図
    



「怨(うら)みと苦(くる)しみは欲 (よく)があるからだ」

「苦しみ」の「苦」とは、「自分の思い通りにならない」という「苦しみ」を「苦」といっているのです。
「五(ご)欲 (よく)」という言葉があります。
①食欲(しょくよく)、
②睡眠欲(すいみんよく)、
③色欲(しきよく)、
④名誉欲(めいよよく)、
⑤財欲(ざいよく)
この五つは人間として生きていくうえで無くてはならないものです。
①の食欲、食べられるということは大切なことです。
②の睡眠欲 も眠れる事は有り難いことです。
③の色欲も子孫繁栄に欠かせないものです。
④の名誉欲は必要ないように思われますが、向上心と考えると、世のため人のために少しでもいい環境を作りだし自分の出来ることを考えていくと捉えると大切なことであると思います。
⑤の財欲も経済観念が無かったら破産してしまいます。

しかし人間の欲望はとどまるところを知りません。「少欲 (しょうよく)知足(ちそく)(欲 を少なく、足ることを知る)」となれればいいのですが、「貪欲 (どんよく)(欲 を貪(むさぼ)る)」といわれるように、次 から次 へと欲 望は深まるばかりです。「有っても、有っても未だ足りない。未だ足りない。」と不平不満ばかりを言って、自分以外のものへの怒り、そねみ、ねたみの心を増大させていきます。

そのことを『仏説無量寿経』には、
「田があれば田に悩み、家があれば家に悩む。牛や馬などの家畜類や使用人、また金銭や衣食、日常の品々に至るまで、あればあるで憂え悩む。それらのものについてとにかく心配し、何度もため息をついて嘆き恐れるのである。思いがけない水害や火災や盗難などにあい、あるいは恨みを持つものや借りのある相手などに奪い取られ、たちまちそれらがなくなってしまうと、激しい憂いを生じて取り乱し、心の落ちつくときがない。怒りを胸にいだいていつまでも悩み続け、心を固く閉して気の晴れることがない。また災難にあって自分の命を失うようなことがあれば、すべてのものを残してただひとりこの世を去るのであって、何も持っていくことはできない。身分の高いものや富めるものでも、やはりこういう憂 いがある。その悩みや心配は実にさまざまである。そしてただ苦しみ悩むばかりで、痛ましい生活を続けている。また、貧しいものや身分の低いものは、いつも物がなくて苦しんでいる。田がなければ田が欲 しいと悩み、家がなければ家が欲 しいと悩む。牛や馬などの家畜類や使用人、また金銭や衣食、日常の品々に至るまで、なければないでまたそれらが欲しいと悩むのである。たまたま一つが得られると他の一つが欠 け、これがあればあれがないというありさまで、つまりはすべてを取りそろえたいと思う。そうしてやっとこれらのものがみなそろったと思っても、すぐにまた消え失せてしまう。そこで嘆き悲しんでふたたびそれを求めるが、もうそのときには得ることができず、ただ思い悩むばかりで身も心も疲れはて、何をしていても安まることがない。いつも憂 いに沈 んで、このように苦しむのである。」と語られています。

欲望に振り回される私たちの姿を偽りなく指摘しています。この欲望が思い通りに行かない時、「怒り、腹立ち、そねみ、ねたみの心」が逆巻き、相手を思い通りにさせようとする行動に出ます。これが単なる喧嘩から、大きな犯罪に、戦争に発展していくのです。
この欲望を如何にコントロールしていくか?それは、お釈迦様のみ教えをしっかりと聞き開いていくことしかありません。



        スイセン


        フキノトウ


       ヒメリュウキンカ