2023年(令和5年) 1月 法話


*生死(しょうじ)出(い)づべき道(みち) 

迎 春

本年もよろしくお願いいたします。

今年は、親鸞聖人御誕生(ごたんじょう)850年・立教(りっきょう)開宗(かいしゅう)800年の節目の年として、西本願寺で3月29日から法要が、京都国立博物館で3月25日から親鸞展が開催されます。是非このご勝縁にご参詣、ご観覧ください。

画家のゴーギャンの遺作に《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》という題名の絵があります。ゴーギャンがこの絵を完成させたのは、49歳のときです。作品制作時、ケガや湿疹などで健康を損ない、娘の死や土地の売買による借金も抱えていました。そして作品を完成させた後はヒ素による自害を図ったが命は取り留めたといわれています。しかし、大きな命題への答えを見出せないままこの作品が遺作となったようです。

親鸞聖人の求道の歩みは、恵心尼(えしんに)文書(もんじょ)に「生死(しょうじ)出(い)づべき道(みち)」と示されます。
ゴーギャンの答えを見出せなかった大きな命題に「往還(おうげん)二回(にえ)向(こう)(往相(おうそう)回向(えこう)・還相(げんそう)回向(えこう))」との答えをスカッと導いておられます。
親鸞聖人は、お師匠様、法然聖人とのお出遇いによって「生まれ難き人間に生まれ、聞きがたき仏の教えを聞き、阿弥陀如来の本願力の大きなはたらきに抱かれていることを知らされ、そして命終われば阿弥陀如来のお浄土に生まれさせていただく身であること(往相回向)」を教えていただかれました。そして、往生浄土のあとは、即座に還相回向のはたらき、すなわち「浄土から娑婆世界に還って、残してきた縁ある方々を仏道に導き、救い取るという大悲の活動に出させていただくということ(還相回向)」を私たちに『教行信証』を通して教えてくださっています。

その感動を親鸞聖人は「三(さん)哉(さい)(慶ばしきかな・誠なるかな・悲しきかな)」と、示されました。そのこころを住職が作詞して歌にしてみましたので味わってみてください。
またこの度、荒井敦子先生に作曲していただきました。機会がありましたら皆様にお聴きいただきたいと思います。

慶(よろこ)ばしきかな          

1、慶(よろこ)ばしきかな 生(う)まれ難(がた)き いのちを
慶(よろこ)ばしきかな 聞(き)き難(がた)き おみのりに出(で)遇(あ)い
親鸞(しんらん)さまのおかげで
阿弥陀(あみだ)さまの本願力(ほんがんりき)に抱(いだ)かれし よろこび

2、誠(まこと)なるかな 背(せ)を向(む)けし このわれ
誠(まこと)なるかな おさめとり むかえとりし 慈悲(じひ)
親鸞(しんらん)さまのおかげで
阿弥陀(あみだ)さまの本願力(ほんがんりき)に抱(いだ)かれし よろこび

3、悲(かな)しきかな 欲(よく)多(おお)く いかり ねたみの
悲(かな)しきかな 恥(は)ずかしき わが身(み) 見捨(みす)てずに
親鸞(しんらん)さまのおかげで
阿弥陀(あみだ)さまの本願力(ほんがんりき)に抱(いだ)かれし よろこび

4、慶(よろこ)ばしきかな 煩悩(ぼんのう)多(おお)き おのが身(み)を
慶(よろこ)ばしきかな 弥陀(みだ)如来(にょらい)の大地(だいち)に根(ね)をおろさしめ
親鸞(しんらん)さまのおかげで
阿弥陀(あみだ)さまの本願力(ほんがんりき)に救(すく)われし よろこび