2023年(令和5年) 9月 法話


  アンベードカル博士
         


        フレンドリーなオオシオカラトンボ

アンベードカル博士 (1891~1956)
   (インド仏教復興運動指導者)


インドのカースト制度は、1950年に制定されたインド憲法・第17条によってカーストによる差別の禁止が明記されました。が、しかし現在でもカーストによる差別が実際に確認され、過去から現在までインドに深く根を張っている制度です。
カースト制度の概要は、4つの社会的身分の総称であるヴァルナ(種姓)の枠組みです。
1、バラモン 2、クシャトリヤ 3、ヴァイシャ 4、シュードラ です。
「バラモン」は、最高位で神への祭祀をつかさどり儀式を行える。もっとも崇高な人々として扱われました。
「クシャトリヤ」は、王や貴族など武力や政治力を持つ第2の階級で元々はバラモンを守護する役目も担っていたとされます。
「ヴァイシャ」は、商人や一部の教育を受けた人々が分類され、多額の資産を持つことも可能な第3番目の階級です。
「シュードラ」は、カースト下位階級で上の階級の人々を支える農民や使用人(奴隷)など単純労働者が分類されていました。

カースト制度には、ヴァルナにさえも分類されない「ダリット(不可触民(ふかしょくみん))」 と呼ばれるアウトカーストの人々がいます。
ダリットとは「壊された民」という意味で、死人や家畜の糞尿(ふんにょう)の処理など不潔とされる仕事をさせられることが多く、特にこれら不潔のものを触ることは人間の精神を穢れさせるという考えを持つヒンドゥー教において他階級の人々から虐(しいた)げられた扱いを受けてきました。

その
「ダリット(不可触民)」出身であったB・R・アンベードカル博士(1891~1956)は、幼少時代から幾多の差別を経験(使用する道路や井戸の飲み水も一般カーストのものを使うことができなかった)しながらも学業に秀で、海外留学を経て帰国後は、独立後のネール政権下でインドの初代法相となります。憲法起草委員会の委員長に任命され、インド憲法の起草の中心的な役割を果たし、憲法第17条において不可触民制の廃止を明文化しました。彼は元々ヒンドゥー教徒でしたが、1935年に行った演説のなかでヒンドゥー教以外の宗教への改宗を正式に宣言し、それから約21年間、研究と熟慮を重ね、最終的に1956年10月、数十万人もの下層民衆と共に仏教への集団改宗を敢行したのでした。

その拠点がインドのナグプールと言う街で、毎年10月に仏教改宗式典が開催されています。今このB・R・アンベードカル博士の活動を1967年から引き継いで現在およそ1億人から1億5千万人とも言われるインド仏教徒の最高指導者として活躍している人が日本人僧侶の佐々井(ささい)秀嶺(しゅうれい)という方です。
 来月、佐々井秀嶺師のことをご紹介したいと思います。



   アメンボ


     コバギボウシ