奈良 淨教寺

2024年(令和6年)8月の法話

のりのたより〔260〕

『ゆりかごから墓場まで』

『ゆりかごから墓場まで』とは、1941年に経済学者のベバリッジ(1879〜1963)によって提唱され,イギリスの社会保障制度のスローガンともなった言葉です。

出生から死亡まで、人の一生のあらゆる事故や出費に対しての行き届いた生活保障を表したものです。

信仰の上からも「ゆりかごから墓場まで」と、一つの宗教で貫いていきたいものです。日本以外の国ではそれが当たり前になっています。しかし日本では誕生後の神社でのお宮参りや七五三、結婚式はキリスト教、お葬式は仏教で。と多信仰にわたると揶揄される事があります。(日本人の寛大な宗教性の表れなのかもしれないですが)

「淨教寺時報」にも紹介していますが、昨年の11月から今年の春にかけて、うれしい事に初参式(お宮参りの仏式版)・七五三参りを本堂で希望され、また還暦、厄年の人生の節目を本堂で家族と共にお参りして阿弥陀様に感謝、御礼を申し上げたいとのご依頼があってお勤めさせていただきました。

 

初参式(お宮参りの仏式版)・七五三参りのお父さんであるY・K君はお爺さんの葬儀がご縁で淨教寺のご門徒になり子ども会、青年会に姉弟でよく行事に参加してくれていました。お母さんが亡くなられて和歌山から墓地を淨教寺境内に移転して一層ご縁が深まり、結婚して二人のお子さんに恵まれてこの度のご縁となりました。

 

また、厄年、還暦法要のK家は、ご主人の葬儀でご縁が出来、墓地も淨教寺境内に設けられ、家族ぐるみでよくお参りになられます。殊に奥様であるI・Kさんは定例法座、写経、コーラス、学園前の淨法会には必ず参られ、その都度お墓参りをされ仏縁を深めておられます。

その中で、お宮参り、七五三、還暦、厄年、一貫してご本堂の阿弥陀様の前で法要させていただくことが一番大事であり、それが本当の信仰のあり方であることを学んでいかれ、その事をご家族に伝えてご一緒にお寺に参詣される環境を整えていかれました。

ご主人との別れの悲しみがご縁となって阿弥陀様の大きな慈悲に出会い、み教えに導かれていかれました。

サルスベリ
御衣黄桜に クマゼミ三匹とカメムシ

 

「還相回向(げんそうえこう)」「権化(ごんけ)の仁(にん)」

親鸞聖人のおことばに「還相(げんそう)回向(えこう)」「権化(ごんけ)の仁(にん)」というものがあります。

「還相回向」とは、「浄土に生まれた者がこの迷いの世界に還りきて人々を救済し続けていくすがた(相)は、阿弥陀さまの本願によって実現した救済の力(回向)」のはたらきのことです。また、「権化の仁」とは、「仏・菩薩が衆生を救うために、さまざまな姿をとって仮にこの世に現れること。またその仮に現れた姿」をいいます。

 

まさに、お二人にとって、お母様が、ご主人が「還相」のはたらきをなされ、「権化の仁」として護り導いてくださっていると受け止められ一層お聴聞に励み、ご家族・有縁の方々とご参詣の機会を今以上にお作りいただければ幸いです。

また、門信徒、有縁の方々も皆さまお一人お一人にとりましての「還相の方」が居られるはずです。ぜひ「権化の仁」のおはたらきを感じながら境内に足をお運びいただきますように念じております。

フレンドリーなオオシオカラトンボ(♂)
夜咲く月見草