法のたより〔271〕
アリのお寺参り
6月23日沖縄県糸満市の平和祈念公園で慰霊の日の式典が執り行われ、その中で2025年沖縄全戦没者追悼式「児童•生徒の平和メッセージ」として伊良波小学校6年・城間 一歩輝(いぶき)君の平和の詩「おばあちゃんの歌」が朗読された。
そこにはおばあちゃんから聞いた言葉をもとに語られ最後に以下のように締めくくられていた。
五歳のおばあちゃんが防空壕での歌を歌い
「艦砲射撃の食べ残し」と言われても
生きていてくれて本当に良かったと思った
おばあちゃんに
生きていてくれて本当にありがとうと伝えると
両手でぼくのほっぺをさわって
生き延びたから 命がつながったんだね
とおばあちゃんが言った
八十年前の戦争で
おばあちゃんは心と体に大きな傷を負った
その傷は何十年経っても消えない
人の命を奪い苦しめる戦争を二度と起こさないように
おばあちゃんから聞いた戦争の話を伝え続けていく
おばあちゃんが繋いでくれた命を大切にして
一生懸命に生きていく
語り伝えることの大切さ。仏壇のみ仏さま、ご先祖を尊び、敬い、礼拝するうしろ姿を見せていくことの大切さをとても深く感じました。
先日、広島出身のご門徒様から「アリの寺参り」という言葉を教えていただいた。それはその方が小さいときお仏壇にお参りしているときの事、畳の上をアリが歩いているのを見たお祖母ちゃんが
「むやみに殺生したらいかんよ。仏間に入ってくるということはよくよくの事や。おアリさんが寺参りしおるんよ。大事に見守ってやらんといけんよ。」と話してくれたそうです。
毎年5月19日に唐招提寺で「うちわまき」という行事があります。それは、鎌倉時代の唐招提寺中興の祖・覚盛(かくじょう)上人が、修行中に蚊にさされているのを見て、それをたたこうとした弟子に、「自分の血を与えるのも菩薩行である」とおっしゃって戒めたという故事があります。そのお徳をたたえ、「せめて団扇で蚊を払って差し上げよう」と、上人が亡くなられたときに法華寺の尼僧がハート型うちわを供えたことが始まりだそうです。
ゴキブリやハエ、ムカデや蜘蛛。苦手な生き物もいるかもしれないが、むやみやたらに殺すことなく、追い払うひと呼吸が欲しいものです。
日々の暮らしの中で出会う草花、小さな生き物にも「ひょっとしたらご先祖の生まれ変わりかもしれない」と慈しみの心を持って、接していく余裕を持って過ごしたいものです。




