奈良 淨教寺

2023年(令和5年)8月の法話

のりのたより〔248〕

*咲かない花さえも咲かせる

NHK朝の連続TVドラマ「らんまん」で、植物学者、牧野富太郎をモデルにした牧野万太郎の言葉に感動する毎日です。昭和天皇も愛用された「雑草と言う名の草はない」は有名です。万太郎の言葉ではありませんが万太郎が見つけた水生植物「ムジナモ」を植物学教室へ持参したところ、田邊教授はそれが日本で未発見の食虫植物だと万太郎に教え、論文と植物図を書いて世界への報告を命じます。そんなある日、開花報告のないムジナモが開花。それを見てみんなが驚く中、田邊教授は「咲かない花さえも咲かせてみせた牧野」と、万太郎を見つめるのでした。

原色牧野植物大図鑑

この言葉を聞いて私は、「なかなか目覚めることの出来ない私を目覚めさせてくれたお釈迦様の教え」と受け止めさせていただきました。

この言葉に関して2つの事がらを思い出しました。

1つ目は、キサーゴータミーさんのことです。

キサーゴータミーという女性の子どもが小さくして亡くなります。何とかして生き返らせたいと願うキサーゴータミーがお釈迦様の元へ来ます。この願いを拒否することなく、「その願いを達成するには、芥子の実が必要」と伝えます。芥子の実をもらいに行くキサーゴータミーの背中に向かって「ただしその実は、亡くなられた方のいない家からもらわないと効果がないよ」と付け加えます。どの家に行っても芥子の実はありますが、亡くなられた方の無い家はありませんでした。そこでキサーゴータミーは気づくのでした。

ムジナモの説明

私だけでなく、同じようにわが子を亡くし、両親を亡くし、夫を亡くし、みなさんご縁の方を亡くして悲しい思いをしている。私が間違っていた。そしてお葬式を済ませ、お釈迦様の弟子となって、同じ苦しみの中にいる方々へ教えを説いていかれたそうです。

2つ目は、『苦しみは成長のとびら』(西原祐治先生著)と言う本から。

6歳の愛児を交通事故で亡くされたお通夜の席でのことです。ご両親にとって通夜の後の法話など耳に入らない状況でしたが、西原先生がある雑誌で読んだ話を思い出してお話されたそうです。

百日紅(サルスベリ)

子供さんが未だ生まれる前、仏さまとお話されたそうです。今度生まれることになっているご両親のもとでは6年しか生きられないから、もっと長い寿命をもった人の上に生まれたらどうか?」と。そのときその子供さんは、「僕は、たとえ6年であっても、これから生まれるお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんの家族のいる家に生まれたい。そして仏さまのお仕事のお手伝いをしてきます。」といって、そのお母さんのもとに生まれたのです。そして、この度この世に誕生して6年間、仏さまのお仕事をして還って往かれたのです。」その仏さまのお仕事とは何であったかを聞いていくことが供養という事です。と法話されたそうです。通夜の後、ご両親が挨拶に来られ、感謝の意を伝え、わが子を仏さまのお使いと受け止め、お話を聞かせていただきますと。その後、ご夫婦は法話会のある日には会社も休み、聴聞を重ね、阿弥陀如来とのご縁を深くもたれるようになりました。三ヶ月ほどたったとき、一緒にお茶を飲んでいると「あの子は、何が大切かを教えに来てくれた仏様かもしれません」と言われたそうです。

お盆の時期に当たり、私を導いてくださった先人に思いを致し、静かにお念仏申させていただきましょう。

ヤマトシジミ